チコみのある鳥を追って 2022
皆さんは”オオバン”という水鳥を知っているだろうか。
鳩以上、カモ未満の大きさで↓の様な見た目をしており、私が住んでいる東海地区では冬になると何処からともなく河川に現れる水鳥だ。
※手持ちに良い写真がないので描いた
こいつらに魅了されたのは去年の冬、川沿いの堤防を散歩している時であった。
昼過ぎの河川敷は暴力的に寒く、見慣れた風景に水鳥達がむっちりと彩を添えていた。
なんかめっちゃもっちりじたばたしてる鳥がいるぞ・・・?
数回目撃してからようやく調べてみると、オオバンという鳥だった。
どのサイトだったか忘れてしまったが、泳ぐのも飛ぶのも歩くのも全部出来るけど別に得意ではないとのことだった。器用貧乏の貧乏寄りという事らしい。
うん、かわいい。推せる。
その後は敢えて河川沿いを散歩に選び、何となく彼らを観察する事が増えていた。実際観察を始めると、ぶきっちょ説はあながち間違っていないのではないかと思い始めた。
潜っても魚は7割方取れていないし、何より水鳥のくせに泳ぎにぎこちなさを感じる。なんというか、よちよち&もちもちとした泳ぎだ。冬毛のもっちり感もよちもち感に相乗効果を起こしている。
かと思えば、徒党を組んで川沿いの堤防でイネ科の種子を啄んでいたりする。水鳥のくせに。
ぎりぎりまで逃げない割にはすぐ戻ってくるし。
なんだこの生き物は。
かわいい。推したい。
そんなこんなで季節はめぐり、いつの間にか彼らは地元からいなくなっていた。
あんなに飛ぶの嫌そうだったのに、頑張ったんだな。あいつら。
そして更に季節はめぐり、朝冷えを重ねるごとにあいつらが帰ってくる季節の訪れを感じていた。
今年の私は一味違う。彼らに対する感情を言語化できるようになっているからだ。
彼らは大変チコみがある。何もしていなくても5チコはある。
※チコみ:いいちこ(飼っているねずみ。画像参照)が先天性疾患で片足が不自由なのだが、本人は全く気にする気配もなく元気に生きている。生きている姿を見ているだけでこみ上げるものがある。対象物にそれに準ずる何かを感じたとき。その度合。
使用例:チコみがある。これは~(数)チコだね。
↑チコみの塊。10チコ
10月下旬、
気づけば山梨県山中湖に来ていた。
いまだに中流以下では未確認なのと、彼らが何処から下ってくるのか気になったのだ。
結果から言ってしまうと、白鳥しかいなかった。
その上ゲリラ豪雨レベルの雨が降りはじめ、あっという間にバードウォッチングなど到底無理な状況になった。やたら押しの強い白鳥に恐れを抱きつつ、居そうな場所をざっと見渡した後早々に離脱を余儀なくされた。
検索しても地元界隈に現れるオオバンの飛来経路は解らなかった。何なら渡らない奴もいるらしいとの事だ。これ以上の追及は野鳥の会案件である。
素人のルート観測は難呆気なく終了した。
だがこれは本来の目的ではない。
そもそも、散歩中にあいつらを発見し行動にチコみを感じニヤニヤするだけで良かった。
早くあいつらに合いたいものだ。
傘の両サイドから容赦なく降り注ぐ豪雨の中、ぐしょ濡れになりながら改めて自己の芯の声と向き合った瞬間であった。
11月中旬、
富士山の麓に流れる1級河川の上流に彼らはいた。
自身が何故そんな所を歩いていたかというと、買い出しの度に居そうな河川を散歩兼偵察しに行っていたからだ。この時ばかりはその甲斐があったといえる。
大きな群れではないが、相変わらずよちもちと泳いでいた。ついでにもう半分は岸でもっちりしていた。
相変わらずとても良いチコみだ。
今年もこいつらを眺めながら散歩できる、その事実を噛みしめた瞬間であった。
その初回を皮切りに、翌週からは中流以下や別の河川でもオオバンたちを見かけるようになった。
12月1週目
国道沿いの河川(海の近く)にいて少し驚いた。こいつら何処から来たんだか。
12月2週目
11月とは別の河川上流で確認。
流れが堰き止めてある所に固まっていたが、流されてきただけな気配がした。
多少根性のあるやつは少し上流の洲の様な所でじたばたしていた。何方もらしくて良い。
※Biomeの画像だが自分で撮ったもの
12月3週目
彼らは1級河川の中流にいた。
11月下旬ではまだいなかったので、この数週間で下ってきたようだ。
そこでの彼らは自分より小型種の水鳥にイキリ散らかしていた。
だがそれも良い。
うちのチコも体重が少し増えた途端に同居ねずみ(チコの次に弱い)にイキリ始めたもんな。
いいぞ、ザコかわいい。
この記事に落ちなどない。私は今後もチコみを摂取しに河川沿いを歩くだろうし、それについて書く気もない。
ここまで読んでくれた貴方も、たまにはゆっくり河川敷でも散歩してみたらどうだろうか。もしかしたら今まで気にも留めなかった所に刺さる何かが見つかるかもしれない。